世界を体現するネット

インターネット上ではネガティブニュースが多く飛び交い「世の中は悪くなっていってる」と主張する人が増えています。確かにSNSを覗いてみるとネガティブキャンペーンの嵐で、それに呼応するようにユーザーの罵詈雑言合戦が繰り広げられています。

しかし実際はどうでしょうか?

IMF経済成長率予測

こちらはIMF(国際通貨基金)が出している経済成長率予測です。程度の差はあれ、世界が着実に成長していることが分かります。

これが事実です。

このようなポジティブニュースはSNSで広がることはなく、ネガティブニュースが然も世界を崩壊させるようなニュアンスで伝播していきます。これはネガティブバイアスと言われていて、人は生存本能があるが故にネガティブな情報に反応しやすいためです。さらにインターネットの匿名性も相まって、ネガティブニュースが拡散するのは一定仕方のないことです。

これらの事象を踏まえて思考を巡らせると「インターネットの世界がリアル世界に近づいてきている」と思うようになりました。

昔のインターネットは一部のインテリ層が使うツールでしたが、今は老若男女、世界中の人がインターネットを使用し、モノ(IoT)までインターネットに繋がるようになりました。その結果インターネット世界とリアル世界の差分が無くなってきています。

今回はこの辺りをインターネットの起源とともに書き留めておこうと思います。

インターネットの起源

インターネットの原形は1960年代にロシアと冷戦中だったアメリカ軍が開発しました。厳密に言うとアメリカのARPA(アーパ)と呼ばれる軍用の開発研究を行う機関が、

  1. 敵の攻撃(核)を受けても途絶えない通信環境の構築
  2. 情報の伝達の量・正確性・速度を上げる
  3. 異なる規格のコンピューター間での通信の実用化

このような目的で開発をスタートし、1969年にカリフォルニア大学のLA校・SB校、ユタ大学、スタンフォード研究所の4つの拠点がネットワークとして結ばれ通信が可能となりました。この時に皆さんも聞いたことのあるパケット通信が用いられます。

※パケット通信とは、データを分割して送り、受け手がでデータを合体させて元に戻し取得する方法。容量の大きいデータも簡単に送れるようになった

日本では1980年代に村井純氏が、JUNET(ジェイユーネット)と呼ばれる東京大学、東京工業大学、慶応義塾大学の3大学を結ぶネットワークを構築し、日本初のインターネット通信を構築しました。

このようにインターネット黎明期はアメリカ軍が開発をリードし、日本では大学などの研究機関が開発してきました。その為、多くのユーザーは軍事関係や学術研究関係の知的な人が多く、「ネットは一部のインテリが使うものだった」という論調はこれが理由です。

この流れが変わったのが1990年代です。インターネットの商業利用が進み1995年に発売されたWindows95がPCとインターネットの利用者を爆発的に増やすことになります。

その後の流れは説明するまでもありませんが、通信環境、デバイスともに劇的な進化を遂げ、多くの人がインターネットに接続する時代になっていきます。

世界を体現するインターネット

2007年のiPhone登場以後もデバイスと通信環境の進化は著しく、特に2010年以降の4G回線が浸透したことによって、誰でもどこでも情報を収集し発信する時代に突入しました。使い方やルールが分からない人も等しくインターネットに繋がり出したのがこの頃です。

ルールを整備するよりもインターネットが早く普及した結果、クソリプや誹謗中傷などが横行し、公序良俗を無視したプラットフォーマーの営利主義の広告もどんどん配信されていきました。

結果として「インターネットの民度が下がった」と感じる人が増えたのだと思います。

しかし、冒頭で述べたように私は「インターネットの民度が下がったのではなく、インターネットがリアル社会に近づいた」と解釈しています。

リアル社会には昔から、いじめや村八分なんて当たり前に存在していました。違法なピンク広告も詐欺もあったし、違法な事件は毎日のように報道されています。

それでも私は「日本人の民度が下がった」とは思いません。それを当たり前として生きてきたからです。

一方でインターネットは短期間で多くの変化を遂げました。

黎明期から使用していた人にっとては、とても居心地の悪い世界になってしまっただろうし、世界の殆どの人がインターネットに繋がると、主義思想は当然ぶつかり合います。醜い罵り合いや、凡そ議論と呼べないやり取りも目にするようになりました。

でもこれらは、リアル社会では昔から存在していました。

本質的にはインターネットの世界がリアル世界に似てきただけです。だからこれからもインターネットの世界は進化を続けるし、その度に目にしたくないものも増えるでしょう。

でも全く気にすることはありません。リアルで起こっていることの再現に過ぎず、インターネットの世界は簡単に遮断も可能です。

世渡り上手という言葉がありますが、これからはネット渡りも上手くなる必要性があります。

インターネットの未来は明るいです。それではまた。