安いことの弊害

日本には昔から「安物買いの銭失い」とか「安かろう悪かろう」みたいな、安いものはそれなりの品質という意味の言葉がありますが、最近は多くの日本人がこの感覚を失いつつあるように感じます。

サンダルが200円、傘が300円、スマートウォッチが800円など、常軌を逸した価格で販売されている中国系ECのTemuやSHEINの人気が日本の貧しさを物語っていて、商品から発がん性物質が検出されても買う人が止まないとか....

世界的にインフレが続いるにも関わらず、この異常な価格でビジネスが成立しているということは、当然誰かが割を食っている訳で、決していい消費とは思えません。

日本では長年デフレが続き、安いことが正義と考えている人が多いですが、それは長い目で見ると自分たちを苦しめることと同義で、適正な価格でモノを買う消費者リテラシーが必要な時代です。

今回は加熱しすぎた安さ追求に一石投じたいと思います。

安いことの弊害

安さを追求すると当然ながら企業の利益は低下します。

企業は利益を確保するために、より安い原材料、より安い労働力、効率性を求めて企業活動を行います。

その結果どうなるか?

品質の低下、顧客満足度の低下、労働環境の悪化、労働者の所得低下、さらに企業の利益率は低下し投資余力がなくなってしまい、イノベーションの停滞を招きます。

まさに今の日本です。

安く買い物ができるとその瞬間は嬉しく感じますが、安さを追求しモノを売買する行為は長期的には社会全体の質を低下させることを忘れてはいけません。

何が得なのかを考える

ガソリンスタンドの3円引きに並んでいる人は、数十円の為に5分を失います。

セール時に食料品を買い溜める人は、安さを得ますが鮮度のいい食べ物を食べる機会を失い、収納のストレージコストを抱えます。

私の実体験もご紹介します。

私は若い頃に年会費無料のクレジットカードを使用していました。ある時、利用していたサブスクリプションから決済ができなかった旨の通知があり、調べてみるとカード情報漏洩の可能性がありカード会社の判断で利用を止められていたことが分かりました。

コールセンターは繋がらない、決済ができなかった取引に関しては振り込み対応が必要となり手数料は自腹、ニュースにもなる程大規模な事件だったため保証は最低限でした。

散々な思いをしたのですが、無料で提供されているサービスには必ず意味があることを知ったし、本当の得とは何なのかを考えさせられる出来事となりました。

適正な感覚を養う

企業が価格を据え置いて内容量を減らすサイレント値上げをしたり、「申し訳ございません、値上げします」と発言したり、ちょっと意味の分からない行動が世の中に浸透しすぎているように思います。

そもそも企業は利益を追求する集団であって、ボランティアでやっている訳ではありません。今の日本企業に必要なのは、値下げでモノを売ることではなく、値上げしてもたくさん買われるような企業努力です。

これこそが真っ当な資本主義です。日本の資本主義は歪んでいます。儲かっていいのです。

経済活動というのは全て繋がっていて値下げをすると利益は減ります。利益が減ると従業員に還元できなくなり、給料の上がらない従業員達は消費に消極的になり、さらに安いモノを求めるようになります。

この循環がデフレスパイラルと呼ばれ、日本が30年もの間苦しんだ一因なのです。

安いことは正義ではありません。適正なモノを適正な価格で買うことが正義です。

それではまた。