金子勇さんとWinny事件

Winny事件の映画を観ました。

2002年に問題となった事件で微かに記憶がある程度でしたが、改めて調べるととんでもない事件だったので、熱が冷めぬ内に感想を残しておきたいと思います。

Winny事件とは

Winnyとは2002年に天才エンジニアの金子勇氏により開発されたファイル共有サービスです。

Winnyは音楽、動画、写真、プログラムなどを手軽に共有できるとあって、広く日本中に浸透しました。

当時としては画期的なP2P(ピアツーピア)と呼ばれる非中央集権型の通信方式を採用しており、エンジニア界隈からの注目も高いサービスでした(P2Pはビットコインなどのブロックチェーン技術の礎となっている)

P2Pの技術

(図参照:P2Pは中央にサーバーや管理者が不在でも回るシステム)

しかしながらWinnyは違法アップロードが相次ぎ、2004年に開発者の金子勇氏が著作権法違反幇助という罪で京都府警に逮捕されてしまいます。幇助(ほうじょ)とは手助けをするという意味です。違法アップロードの手助けをしたということで、著作権法違反幇助という罪に問われたのです。

しかしながらWinnyはファイルを共有するツールであり、その使い方が違法か合法かは利用者次第です。違法な使い方をする人が悪いのであって、開発者は何ら悪くありません。

当然ながら金子氏には無罪判決が言い渡されるのですが、7年もの長きに渡り裁判によって苦しめられるのです。(金子氏は2011年の無罪判決からわずか2年後に43歳の若さで心筋梗塞で亡くなられています

さらにこの事件は新しい技術を提供して、違法に使われたら警察・検察にしょっ引かれるという前例を作ってしまい、技術者が萎縮する要因となってしまいました。

加えて同時期に起きたライブドア事件も相まって『IT業界で頭角を表すとヤバい、目立つと刺される』という共通認識が世の中に浸透してしまいました。

これらの事件がIT業界に与えた影響は大きく、IT後進国になった要因だという論調もあります。また警察・検察の行き過ぎた捜査に違和感を感じた国民も増えることとなりました。

イノベーションと規制

どちらかと言うと新しい技術に慎重な日本ですが、それは同時に市場を失うことと同義であることを忘れてはいけません。

例えばWinnyはYouTubeの要素と、ビットコインの要素を併せ持ったサービスです。ここにメスを入れたことにより将来の巨大な市場を失ったと言えます。

ドローンについても同じです。

今や世界で5兆円のマーケットになっていますが、日本は規制により競争力を失いました。

2015年に首相官邸にドローンが墜落するというセンセーショナルな事件が起きて以降、航空法と小型無人等飛行禁止法によりドローンは厳しく規制されることとなりました。さらに、ドローンを商業利用する際は道交法、民法、個人情報保護法、電波法、都道府県条例などをケアする必要があり、商業利用でさえ煩雑な手続きが必要な状態です。

結果として、日本でドローンを利用することが非常に面倒になってしまい、開発が進まず競争力を失ってしまったのです。

イノベーションにはリスクと痛みが伴います。しかしながら、イノベーションを拒んだ日本が世界経済でプレゼンスを失いつつあることも事実です。

何が正しいのか正解はありませんが、緩やかに衰退していく日本を次の世代に残したくないと私は思います。

Winny事件の感想

最後にネタバレしない程度にWinny事件の感想を簡潔に記します。

  1. 日本が衰退してしまった理由
  2. 警察・検察の行き過ぎた捜査や取り調べ
  3. マスコミの偏った報道

この辺りの社会問題を鮮やかに映している作品だと思います。

AmazonPrime会員であれば無料で観れますので是非チェックしてみてください。

では、また。

【映画『Winny』はファイル共有ソフト「Winny」を悪用したことにより著作権侵害などが引き起こされた「Winny事件」をベースにしたもので、Winnyにまつわる事件を絡めつつ、開発者である金子勇の逮捕、起訴、無罪判決までの過程を描いたノンフィクション作品】