職業柄地方に出張に行くことが多いのですが、どこに行っても景色が似ているな〜と感じます。主要な都市に空港があり、高速道路が大動脈のように張り巡らされ、国道や県道は毛細血管のように隅々まで行き届いています。
幹線道路を少し外れると住宅街や田畑が出てきて、日本の「The・田舎」の風景が広がっています。
戦後復興や、高度経済成長期のインフラ整備が全国で一斉に行われたこともあり、似たような設計基準、似たようなデザインで作られているので、当然と言えば当然です。
こういった視点で地方をみると、驚くほど似通っていことに気付きます。
経済大国1位、2位のアメリカ・中国でさえ、車で1時間も走ればガタガタ舗装されていない道や、スラムのような別世界の景色が広がります。日本は津々浦々インフラが整備されていて、均一的な景色が広がっており本当に大したモノです。
と言うことで、今回は出張で気付いた"日本の地方の景色がなぜ似ているのか"について考えてみます。
日本のインフラ史
地方の景色がなぜ似ているのかを理解するために、簡単に日本のインフラ史について振り返ってみます。
1950年代から1970年代にかけて「もはや戦後ではない」「所得倍増計画」など、キャッチーなフレーズを旗印に、日本はぐんぐん経済成長を遂げていきました。
この時代の日本経済は年平均10%以上の成長を遂げており、インフラにも莫大なお金を投資してきました。(因みに今の成長率は1%程)
全国総合開発計画と呼ばれる「日本の国土をどのように開発していくか」の基本方針が掲げられ、そこに「地域間の均衡ある発展」と明記されたことにより、日本全国に平等にインフラが整うきっかけとなりました。さらに田中角栄氏が提唱した「日本列島改造論」も地方のインフラ発展に大きな影響を与えました。
このように高度経済成長期の集中投資により、高度なインフラが日本全国に行き届いたのです。
※しかしその結果として、多くのインフラが同時に老朽化を迎えるという問題が生じています。
ファスト風景化
ここからが本題ですが、日本の地方の風景は驚くほどよく似ています。上の写真を見てデジャブのように感じる人も多いはずです。
地方の国道や県道は殆ど同じような規格で作られており、道路沿いには同じようなチェーン店が並んでいます。このような均質化された景色を「ファスト風景」と呼ぶそうです。実に秀逸なネーミングです(笑)
高度経済成長期に一斉に作られたインフラであり似ているのは当然です。
さらに、地方の独自の個性を持ったお店は、大型ショッピングモールやチェーン店に客を取られ姿を消しています。これも景色が均質化してしまった要因の一つです。
つまり、地方において景色が似ているのは、同じような時代に似たようなデザイン・規格で作られたインフラに加え、勢力を拡大した全国チェーンのようなお店が軒を連ねた結果なのです。
これからの地方の風景
高度経済成長期に一斉に作られたインフラは、同時に老朽化が進みここ数年で一気に朽ち果ててきています。
残念ながら緩やかに衰退していくことが決定している日本で、全国のインフラを今まで通り全て維持することは不可能です。
国土交通省によると平成12年から令和6年にかけて全国で47もの鉄道路線が廃止されました。理由は簡単で採算が合わないからです。民間にはこういった波が既に押し寄せてきています。
また、総務省の過疎地域(令和2年)における調査では、平成27年以降に消滅した集落は全国で164もあり、当然過去最多を記録しています。いわゆる廃村と呼ばれているもので、地域の景色を一変させています。
さらに、消滅可能性自治体というセンセーショナルなニュースが話題になりましたが、2050年までに744の自治体が消滅する可能性が出てきています。
全体の4割が消滅の危機に瀕していることから「道路が老朽化しました」「橋が崩れそうです」「電線が切れました」みたいなことになっても全て元通りにするのは難しいんじゃないかと思います。
と言うか、人の住むことのできるエリアが極めて限定的になり、政令都市や県庁所在地に集中するみたいなことが起こりうると考えています。
30年後の地方は、衰退の一途を辿り住むことができるエリアが限られ、そこに人が集中するでしょう。
それはそれで、また似たような景色になるのでしょう。
それではまた。