Web広告ビジネスの劣化

Web広告の劣化が酷いですよね。Webの記事やSNSもこれでもかと言わんばかりに広告をペタペタと貼っています。

しかも、その大半が劣悪で気分を害してしまいます。

少し前にMeta社(旧Facebook)に詐欺広告が蔓延しており、前澤さんや堀江さんが抗議し、国も重い腰を上げ対策に乗り出しました。

詐欺行為を働く反社会的勢力から金銭を受け取って詐欺広告を表示し、詐欺行為を幇助しているMeta社は反社会的企業と見られてもおかしくない。そこに広告を出す企業側の倫理観も求められ、今後多くの企業がMeta社プラットフォームから広告を引き下げる可能性がある。

普通であれば詐欺広告が蔓延していたら警察や国が対処に乗り出すべきですが、日本の偉い人はメガプラットフォーマーに弱腰で本当に頼りになりません。Winny事件の時のように京都府警にはMeta社やGoogleに凸して欲しいものです...笑

2018年頃にYouTubeプレミアムのサービスが開始され「Web広告はもうダメだろうなぁ」と思い始めていました。

広告ビジネスで稼いでいる会社が広告を飛ばせるサービスをローンチしたことが衝撃でしたし、それは広告はうざいよねって言っていることと同義です。長期的に考えたら確実に衰退するし、Web広告の限界が見えたような気がしました。

今回はWeb広告について私の考えを書き留めておきます。

Web広告の歴史

日本の広告費の推移
日本の広告費の推移

Web広告の歴史は比較的浅く、1990年代にスタートします。

黎明期は日本がWeb広告の世界をリードしており、1996年にYahoo!Japanが検索サイトを開設し、クリック型の広告サービスを開始します。ソフトバンクは電通と手を組み日本初のインターネット広告会社であるサイバーコミュニケーションズを設立します。

世界では同じ時期にAmazonが世界初のアフィリエイト広告をスタートさせ、Googleの検索サービスがアメリカでリリースされたのもこの年です。(日本語対応したのは2000年)

そして1999年にNTTドコがiモードをリリースし時代が大きく動きます。

モバイルインターネット接続が可能になり、携帯電話でWebサイトの閲覧やメールの送受信、さらにニュース、天気予報、交通情報、ゲームなどのコンテンツを楽しむことができるようになりました。

iモードはたった数年で4000万人以上のユーザーを獲得し、世界が注目するサービスに進化しました。

当然ながら人が集まるところには広告ビジネスが生まれます。2000年にNTTは電通と手を組みメディアレップである株式会社D2Cを創設、ドコモアドネットワークという独自の広告配信プラットフォームを構築し、ドコモ経済圏のWeb広告でがっぽり儲けています。

世界に目を向けると2000年にGoogle Adwordsがリリースされ、検索連動型広告がスタートします。2003年にGoogle AdSenseがスタートし一般消費者が広告を貼って稼げるモデルがスタートします。(YouTuberのWeb記事版のようなもの。アドセンサーと呼んだりしていた)これを機にWeb記事の広告ビジネスが加速します。

2005年にはYouTubeが創業され、2006年にGoogleが買収、テレビ以外での動画広告配信が本格化します。

その後2007年にiPhoneがリリースされ、SNSを始めとするアプリケーションが発達します。Facebook、Instagram、X(旧Twitter)だけでなく、LINEやWhatsAppなどのメッセンジャー系のアプリでも広告が配信されるようになりました。最近ではTikTokのショート動画広告もシェアを伸ばしています。

Web広告の進化と共にレギュレーションも厳しくなります。景表法や薬機法はもちろんのこと、2023年からはステマ規制も始まり消費者保護に重きが置かれるようになります。

しかしながら厳しく取り締まりすぎると、プラットフォーマーの広告収益が減ってしまうので、昨今はグレーな広告を黙認しているケースが散見されるようになりました。

詐欺広告の被害
日経新聞

日経の調査によると2024年の上半期だけで500億円のSNS詐欺被害があり、年々増加傾向にあるとのこと。さらに、Instagramが31.4%、Facebookが19.4%となっており、実名で使うことの多いMeta社で詐欺が多いことを考えると、非常に悪質だと言わざるを得ません。

Webの広告が発達すれば悪用してしまう人が出てくるのは世の常ですが、プラットフォーマー側は収益の観点から取り締まりに消極的なのが実情です。

長期的な視点でのWeb広告

長期的な視点で考えたときに、Web広告は確実に衰退すると思っています。昨今のGoogleやMetaの決算は好調に推移しているように見えますが、私は少し懐疑的な目でみています。

例えば、GoogleAdSenseはレギュレーションを緩め、1記事内に貼れる広告の量を増やしインプレッションを稼いでいます。またスクロールする時に触れてしまうような箇所に広告を配置し故意にクリックさせたり、ブラウザ上で意図せずに大画面で広告を表示させたりします。

また、YouTubeも2つの広告を見なければ動画がスタートしない仕組みになっており、決算上では広告収益が上がって好調に見えますが、実はユーザーの満足度を失いつつあると考えています

またSNSでは広告表示を減らすための有料プランが登場しています。言葉を選ばずに言ってしまえば、SNSに対してお金を払うことのできる裕福な人が広告を見ず、SNSにお金を払うことのできない貧しい人が広告をみることになります。こんなプラットフォームでまともに広告ビジネスが成立するとは思えません。

さらに、治安の悪いプラットフォームに広告を出稿するとレピュテーションリスクが発生してしまうため、大企業や有名企業は易々と広告を出すことができなくなります。

だから長期的に考えた時にWebの広告は衰退するのです。

素晴らしいクリエイティブが勝つ世界線

最後に今後の広告について考えてみます。

結論は素晴らしいクリエイティブが勝つ世界線になってくると思います。一般的に広告はうざいですが、そのなかでも人の心を掴むキラリと光るクリエイティブが存在します。

少し前にTwitterで話題になった広告ですが、このような広告クリエイティブが人の心を動かし購買行動を変えるのだと思います。

テクニカルにインプレッションを稼いだりクリックを稼いだりする従来のWeb広告は、擦れたら入れ替え、擦れたら入れ替えの終わりなきラットレースです。

広告クリエイティブで人の心を動かし、人の購買行動を変え、喜ばれる消費に繋げる。

一広告マンとしてそんな世界線になっていくと信じています。

それでは、また。